こんにちは。本の虫にっき管理人のdonutです。
今回は、出版業界を目指す就活生に向けて、
内定獲得のために必要な準備について解説していきます。
私は新卒の際に、出版社を中心に就職活動し、とある出版社に内定しました。
現在は別の出版社で働いていますが、
大学生の頃のインターンなども含めると合計3社で働いた経験があり、
実際の内部の実情を知っているからこそ、出版社を目指す就活生にアドバイスできることがあると思い、この記事を書いています。
「出版社で働きたいけど、どんな対策をしたらいいかわからない…」という人や、
「少しでも出版社での内定に近づきたい」と思う人はぜひ参考にしてみてください!
1.出版就活は狭き門!? 出版就活の現実
まずは出版就活のリアルな現実について、解説していきます。
「出版就活は狭き門」だというイメージのある人も多いのではないでしょうか。
では、実際にどうなのか見て行きましょう。
講談社の採用サイトによると、
2023年度の書類選考の応募者総数はなんと7088人だそうです。
そして、最終の内定者は23人。
すなわち、倍率約308倍、300人に1人が内定する、という計算です。
その他の大手出版社も内定率が大体100~200倍だと考えると、
非常に狭き門であるということは間違いないでしょう。
実際、私が内定した出版社でも、
応募総数に対する内定率は150~200倍程度でした。
他の業界、例えばITや金融などは、そもそも内定者が100人以上というところもあり、
一概には言えませんが、一般的な内定率は10~20倍程度のところが多いのではないでしょうか。
なぜこのように出版社は内定率が他の業界と比べて高いのかというと、
出版社は応募の総数に対して、採用人数が非常に少ない業界だからです。
大手と言われる1000人以上の従業員数がいる会社はKADOKAWAのみで、
その他の出版社は、おおむね他の業界で中小企業に分類される従業員人数です。
知名度の高さに反して、出版社は従業員数が多くないため、
必然的に狭き門になるのです。
また、そういった狭き門である出版社の選考では、
SPIはもちろん、特殊なペーパーテストや作文が課せられたり、
大多数の人数を選考するため、特に一次や二次の面接時間が10~15分程度だったりして、
その一瞬で自分の力が出し切れなければ容赦なく落とされてしまう、というシビアな選考を進めていくことになります。
だからこそ出版業界の就職活動では、
入念な準備が非常に大切になってきます。
2.出版就活に挑む前にしておくと良い準備
①アルバイトやインターンをする
もしあなたがまだ就活まで余裕があるのであれば、
出版社が募集する「アルバイトやインターン」にとにかく積極的に応募してみましょう。
私が実際に大学生だった頃も、
複数の出版社でコミック編集のアルバイトやインターンを経験しました。
出版社のアルバイトはなかなか見つからない…という場合も多いようですが、
実際、それはリサーチが足りていないケースもあります。
有名企業だけではなく、いろいろな出版社を知って、
まず興味を持ち、そのうえで応募していないか調べてみましょう。
実際、私が参加していたインターン先の出版社に雇用された際は、
直接、出版社の社長が参加するイベント先へ行って、
社長に「御社のファンなんですけど…」と話し、「それなら」とインターンを紹介してもらえたことがあります。
また、友人の話では大学の教授が出版社にコネクションを持っていて、
そのツテでアルバイトを紹介してもらえたケースもあるようです。
まずは、アルバイトやインターンの情報がないかインターネットなどで探し、
それでも見つからないようであれば、積極的に周囲の人間や自ら動いて機会をつかみに行くことが必要でしょう。
出版社で就業をした経験は、必ずプラスになります。
会社や仕事のことをより深く知るきっかけになりますし、
就業先の社員があなたのことを「模擬面接」などで助けてくれる可能性もあります。
ですので、チャンスがあればぜひアルバイトやインターンに挑戦してみてください。
②とにかく本を読みまくる&コンテンツに触れる
そして、できるだけ本を読みまくったり、たくさんのエンタメコンテンツに触れましょう。
私が新卒で入社した会社は、比較的マイナーなジャンルを扱う出版社だったのですが、
私はそのジャンルの本が大好きで元々多く読んでいたからこそ、
内定に一歩有利になり、
かつ実際入社した後も、自らの知見を活かして働くことができました。
また、現在、携わっている編集の仕事でも、
一から企画を作るのではなく、既存のヒットしているコンテンツや自分が心を動かされたものを元にして、企画を作ることが多いため、
「○○の漫画の雰囲気にしたい」「ベンチマークになる本は××」など、
知っている本やコンテンツが多ければ多いほど、企画を立てる際の市場調査や売れる企画を立てる解像度が高まります。
ただ名前を知っているのと、実際に読んだことがあるのでは大違いです。
さらに、出版社に入れば、
周囲の人や著者、書店員さんなど、関わる人もまたみな本や映画、ゲームなどを愛している人たちです。
そういった人たちと対等に話し、お仕事をしていくうえでも、
コンテンツへの理解が深く、知識が多いに越したことはないです。
私も好きな本のジャンルは小説や人文・哲学などの専門書、ビジネス書という感じで、活字がメインでしたが、
就活の際に漫画喫茶に通い、特に売れているコミックなどを積極的に読むようにしていました。
出版業界は就活対策の一環として、
面白い本やコミック、映画やゲーム、音楽、テレビなどにたくさん触れることができます。
ぜひ自分の興味はもちろん、それ以外のジャンルも興味を持っておくと良いと思います。
③出版社がやっている取り組みについて知る
さらに、「出版社がやっている取り組み」についても知っておくようにしましょう。
例えば、あなたは「漫画アプリ」をどれぐらい使っているでしょうか。
実は、私自身ほとんど使う機会がないのですが、
漫画アプリは現在、ユーザ数が爆発的に増えており、収益化の構造も整って、
「紙の本が売れない時代」に出版社を支える収益源の一つとなっています。
特にコミックを扱う出版社では、
力を入れている領域の一つなのです。
また、最近の出版社は紙の出版以外にも、
キャラクターグッズや海外へのライツ展開、教育や不動産事業も手掛けていたりします。
それらは「斜陽業界」と言われる出版社が生き残るために行っている重要な戦略の一つであり、
その中から今後何十年伸びていく事業を見つける最先端の取り組みであったり、確実に利益を出して出版を下支えしている重要な事業であったりします。
新卒社員こそ、そういった新たな領域を担う人材であり、
「本の出版」以外にも出版社がどんなことに挑戦しているかにもアンテナを張ると良いでしょう。
④出版就活をする仲間を作る
出版就活をするにあたっては、
「就職活動を共にする仲間」を作るのも良いでしょう。
就活は情報戦です。
特に、出版社の就活は他の業界にはない特殊な対策をしなければいけないことも多く、
対策の範囲も幅広く、一人では難しいことも多いので、
できるだけ共に闘う仲間を作ることをおすすめします。
私が就活生の頃は、コロナ禍だったこともあり、
大学のマスコミサークルには所属しましたが、
リアルで仲間を作ることができず、
面接対策や情報収集の面で非常に苦戦しました。
また、ほとんど一人で就活をすることになったので、
内定率が非常に低い出版社の就活を進める中で、
内定が出ず、非常にメンタル的に辛くなってしまう時期もありました…。
あなたの周りに出版社への就職を目指す友人や知人がいればもちろんですが、
そういう場合以外にも「出版社就活団体」のように、大学の垣根をまたいだ団体などがあります。
ぜひチャンスがあれば、そのような団体に所属して仲間を作り、
情報収集や面接練習、精神面での助け合いができると良いでしょう。
また、そうした仲間を作るメリットとして、
実際に出版社に合格したOBにつないでもらえるという利点があります。
OBと話す中で、アルバイトやインターンを紹介してもらえたり、
就活をする上で有利になるアドバイスや情報がもらえることは間違いないでしょう。
⑤滅多にできないような経験をする
また、もしチャンスがあれば「大学生」という特権を活かして、
滅多にできないような経験をしておきましょう。
そして、それを面白く話せるようにしておくと選考の中で活きるはずです。
出版社は他の業界に比べ、
エンタメを扱っているからこそ、より個性的で面白い尖った人材をできるだけ採用しようとします。
さらにあなたが過去してきた経験がそのまま企画になったり、本になったりするお仕事です。
何か趣味があれば、それに関しての本が作れたり、
滅多にない経験があれば、それを活かして特集を組んだり、新たな企画を立てたりできるかもしれません。
出版社の採用サイトを見ればわかる通り、
画一的で優等生的な人材よりも、
好奇心が旺盛でいろんなことにチャレンジしていたり、
個性的で多様な人材を取ろうと考えているため、
珍しい体験ができる場所に足を運んだり、自らいろいろな経験を積んでおくと良いでしょう。
3.出版就活ですべき対策一覧
ここからは出版就活ですべき対策を一覧で簡単に紹介していきます。
必要な対策は主に以下の3つです。
- SPI試験
※他の業界と変わらないもの。ただ、大手は競争率が高く足切にあう可能性があるため、対策必須。 - 作文や筆記試験
※作文は三題噺やお題が出て、時間制限内に指定の字数を書くもの。筆記試験は漢字や時事問題など、教養を試すもの。 - 面接
※一次~四次面接など。好きな本やアニメなど、コンテンツに関する質問が多い。また、「出版業界の今後」についてなど、業界に関する話題もある。
こうした出版社の就活ならではの試験対策以外にも、私が出版就活を通じたうえで、役に立った準備について、3つ紹介します。
①企画の用意
編集職を志望する場合は、間違いなく聞かれる質問です。
「入ってどんなことがしたいか」「どんな本を作りたいか」、
必ず企画を用意していきましょう。
企画の作り方のポイントは、5つです。
「タイトル」「著者」「企画内容(テーマや構成案)」「ターゲット」「書影」です。
あなたが作りたいジャンルで売れている本や題材にしたい本を読み込み、
「どんなタイトルが売れやすいか?」「どんな著者がいいか?」
「内容は?」「ターゲットは?」「書影はどんなイメージか?」、
実際に考えてみましょう。
友人や家族、先輩に企画を説明して、感想やアドバイスをもらえると、なおよしです。
②自分が強いジャンルを知る
また、自己分析の一貫として、
自分が他の就活生に比べて強いジャンルを知っておくのも一つの手です。
私は元々小説が好きで文芸を志望していたのですが、
いざ就活を始めてみると、文芸のジャンルは非常に競争率が高くて難しかったのに対し、
2番目に好きなニッチなジャンルの出版社は、
大学生であまり好きな人がいないジャンルだっため、非常に珍しがってもらえ、とんとん拍子で選考が進みました。
自分が好きなジャンル=適切なジャンルとは限りません。
強みを発揮できるジャンルを知ることで、内定へ近づく可能性があります。
③業界分析
そして、「業界分析」も欠かせません。
先に述べたように、OBや就活仲間を作って情報を収集するのはもちろん、
業界で働くイメージが湧きやすい本を紹介します。
出版社の働き方について、
よく知りたい方は、『重版出来』(松田奈緒子著、小学館)『たった一人の熱狂』(見城徹著、幻冬舎)を読むと良いです。
『重版出来』は出版社のコミック編集部を題材とした漫画で、
非常に内部のことが詳しく描かれています。
『たった一人の熱狂』は伝説の編集者、現幻冬舎社長の見城徹さんの仕事ぶりについて学ぶことができます。
また、幅広く手軽に売れているコンテンツや本を知りたい場合は、
『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)や『日経エンタテインメント』(日経BP)などの雑誌に目を通しておくと良いでしょう。
4.出版社はこんな人物像を求めている!!
最後に、出版社が求めている人物像について、解説していきます。
出版社は以前の記事にも書いたように、「斜陽産業」だと言われており、「紙の本」が読まれなくなっていることで、苦境に立たされてきました。
また、業界全体として構造的な問題を抱えており、
その構造変革が急務でもあります。
実情として、大手は近年のコミックの大型のヒットなどによって、
業績が伸長している企業も出てきていますが、
中小企業になると、ヒットに悩まされ、存続が危うい会社も多いという現状があります。
実際、書店の閉店数は年々増え、
同時に出版社の倒産も増えているという実態があります。
こうした業界全体が古く、変革が求められている今だからこそ、
期待を込めて採用される新入社員には、下記のような素質を持つ人材が求められると感じます。
- とにかくタフネスな人
※出版社は予想以上に泥臭い仕事だから。 - 趣味が幅広い人
※コンテンツを広く知っていることが重要だから。 - 誰にも負けないコアな趣味を持っている人
※個性的で面白い人を求めているから。 - ハングリー精神のある人
※企画をできるだけ多く出す、10万部・20万部のヒットを出してやるというバイタリティに溢れた人が必要だから。 - クレバーな人
※企画を作るにあたって自ら深くニーズを掘り下げたり、市場を分析、リサーチする思考力が必要だから。 - クリティカルシンキングのある人
※変革が常に必要な業界だから。新しい企画を思いつくための発想力・思考力はもちろん、現状を変えるにはと考える姿勢も必要だから。 - 業界を変えるという意気込みのある人
※業界全体として、こうした意識を持つ人を求めているから。
すべてではなくとも、一部に当てはまったり、
何かに特化しているという人は就活でぜひアピールしてみてください。
また、もし欠けているという要素があれば、
意識的に身に着けるよう心掛けてみてください。
5.まとめ
今回は、出版社の就活について、
私の体験をもとにしながら詳しく解説してきました。
ですが、出版就活は特殊で対策も幅広いため、
とても今回の記事ですべての情報を網羅したとは言えません。
いろいろなサイトや体験談、本、周囲の人や先輩などから、
より詳しい情報など、合わせて集めてみてください。
納得のいく、出版就活ができることを心から祈っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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