斜陽産業で働いてもいい? 実際に働く20代OLの実体験

仕事

突然ですが、私はいわゆる斜陽産業と呼ばれる『出版業界』で働いています。
「若者が本を読まなくなった」「街からどんどん書店が潰れていく」…など、
そんなニュースを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

出版業界は”斜陽”と言われますが、実際どうなのか、
そして、「斜陽産業」で働くということはどういうことなのか、
お伝えしていこうと思います。

1.出版業界が斜陽産業である理由

「本を読む人が減っている」。全てはこれに尽きると思います。
電車に乗っていてもひと昔前は、本を読んでいたり、新聞を開いていたりする人が大半でしたが、
ご存じの通り、今はスマートフォンを片手に、画面を見つめている人がほとんどです。
「可処分所得」という言葉があるように、
「本」を読むことが空いた時間の暇つぶしだった頃と比べ、
現在は、スマートフォンはもちろん、その中のTIKTOK、Instagram、X、YouTube、ゲームなど、
ありとあらゆる暇つぶしが身の回りに溢れています。

PCに変わるものが現在のスマートフォン、
車に変わるものが自動運転の車…なのだとすれば、
本に変わるものは他の暇つぶしのあれやこれと「インターネット」だったのではないかと思います。
本でもはや情報を仕入れる必要がなくなったからです。

実際、体感だけでなく、データでも「本を読む人」が著しく減っていることがわかります。
クロスメディアが2023年9月に公表したデータによると、
20代女性の53.6%が実に”年間に1冊も本を読まない”ということで、
「二人に一人以上の人」が365日の間、本という媒体に全く触れないということです。

年間に何冊も本を読む本好きの人からしたら、驚異的な数字だと思いますし、
これをさらに「電子書籍」を除く、「紙の本」だけにすると、もっと多くの人が本に触れていないということでしょう。
街の本屋さんの売上が厳しくなってくるのも当然です。

つまり、市場そのものが縮小しており、今後も革新的な変化が起こらない限り、出版業界でこういった状況は続くと考えられるのです。

2.斜陽産業で働くとキャリアはどうなる? 年収は?

今回、ここでお話している「出版業界」に限っていえば、
”キャリア”に不安もあるが、
結局のところ「自分次第」というのが大きいかもしれません。

業界の中でも、出版社に限定していえば、
営業職・事務職・経理・IT部門など、他の業種にもつながる普遍的な職種と、
「編集職」のような専門的な職種があります。

社内でも、普通に他の業界から入って来る人たちや、違う業界へ転職していく人たちが少なからずおり、
決して出版社に入ったからといって、つぶしが利かなくなるということはないでしょう。
一方で、業界特有の不安もあり、
職種によっては、新たなスキルが身につかない、
自身の市場価値を上げる経験を積むことができない、
ということはありそう
です。

古く歴史のある業界なので、
自らキャリアを形成する意識を持たないと、
日々の激務の中で、気づいたら、職歴が長いのにスキルはあまり身についていない…という状況もあり得ます。
これも業態によって、先の見えない仕事であったり、
専門知識ばかり身についていざ他の業界に挑戦したいとなった時に、
全く経験がない、とうことは起こり得るかもしれません。

また、年収については、会社によって様々だというのが大前提の上で、
やや他の業界に比べて上がり幅が少ない、という状態が現実だと思われます。

先にも書いたように、「本が売れない時代」なので、
会社として売上を立てることが難しい場合もあります。
そういった企業では、仕事の忙しさ、充実さに比べて、
”年収が低い”傾向はあるかもしれません。

それでも、この業界特有なのか、
「低賃金でも仕事にやりがいがあるから問題なし!」のような仕事狂も一定数いるので、
賃金の低さにあまり囚われていない人が多いのも事実なように思います。

3.斜陽産業におすすめな人/そうでない人

ここまで見たように、斜陽産業はキャリアや年収を見た時に、
誰にとってもベストな環境であるとは言えないかもしれません。

特に、業界全体が頭打ちになっている中で、
働き続けることに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

今回は、私が実際に働いている出版業界に特化してお伝えしてきましたが、これは他の業界にも当てはまることで、
会社は起業しても30年後にはほとんどが倒産してしてしまうという話を聞いたこともあるでしょう。

実際、車やIT企業など、出版に比べれば盛り上がっていそうな業界も、
淘汰されて現在の会社が存続しているに過ぎません。
特に斜陽産業となれば、なおさら「会社が無くなってしまうのでは…?」という心配を抱えながら働くことになるかもしれません。

斜陽産業で働くことに向いている人は、
すなわち、「その業界を変革しようという熱意を持っている人」でしょう。
その業界に愛があって、業界全体の課題を変えてやるんだ!ぐらいの熱い想いがあった方が、
斜陽産業の会社がその人を雇用する強い理由になり得ますし、
会社として、そういう人を求めているからです。

出版業界も斜陽でありながら、就職活動では非常に人気で倍率の高い業界の一つかと思いますが、
「ファン」であるだけの人は、面接ではじかれてしまいます。
「ファン」は「ファンのまま」でいてほしく、
業界を変える意識がある人こそ、売上が厳しい中で、雇う理由になるからです。

一方、業界に対して、そこまで熱い想いがなく、
たまたま雇用されてしまった人、なんとなく働き始めた人にとっては、
大変なのに、賃金が少ないという不満を抱えやすい環境とも言えるかもしれません。

今後、斜陽産業で働く可能性がある人は、
その業界にどれほどの思いを持って働くことができるか
もしそこまでの熱量がないのであれば、キャリアや年収アップのための転職も見据えて、
どんなスキルや経験がその職場で身につけられるか、自身で考えながら働く必要がありそうです。

4.結局、斜陽産業で働くことはおすすめか?

結論から言うと、万人におすすめはできないかもしれません。
が、その業界に高い熱量を持って挑める人であれば、
これほど最適な環境はないとも言えます。

私自身にとっては、後者の環境であり、
背水の陣だからこそ、書店や他の出版社、読者、著者を巻き込んで、業界を変えていける大チャンスだと思えます。
自分の力と熱意が最大限に発揮できる環境だということです。

一方、そうした業界で働くことは、
必ずしも簡単なことではなく、
日々売上の不安や思うように成果が上がらないこと、
退職していく人々を見て、葛藤や悩みと闘うことにもなります。
また、非常に忙しい業界でもあるので、
日々の業務に忙殺されながら、「このままでいいのだろうか…」という将来への不安を抱えることにもなります。

出版に限らず、
そうした業界で働いているのだ、ということを理解したうえで、
なお選ぼうとする人にはおすすめできる環境です。

一方、そこまでの気持ちがないのであれば、
他の業界も視野に入れて、検討した方が良いかもしれません。

斜陽産業で働く人もそうでない人も、
自分が一番価値を発揮して、輝ける環境で働くことができることを、
願っています。

最期まで読んでいただき、ありがとうございました!

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