【実体験】出版社で働く編集者の仕事とは? 仕事内容や一日のルーティンを紹介

仕事

こんにちは。本の虫にっき管理人のdonutです。
今回の記事では、「編集者の仕事」について、詳しく紹介していきます。

私は現在、社会人2年目で出版業界で働いています。
現在は”編集者”と呼ばれる本作りの仕事に携わっており、
特に漫画を作る仕事をしています。

元々は別の出版社で”書店営業”の仕事をしており、
最近、現在の出版社へ転職して、編集者になったばかりという状態です。

そのため、まだ編集者としての歴は浅いのですが、
だからこそ普通の人から見ると「何をしているんだろう?」というような、
謎に満ちた「編集の仕事」を日々新鮮な気持ちで体験し、
客観的に紹介できるのではないかと思っています。

今回の記事では、「編集者」と呼ばれる人たちが、
一体どんな仕事をしているのか解説していければと思っています。

「出版業界に興味がある」という就活生や転職を検討している方
「将来は編集者になりたい」という方に参考にしてもらえれば幸いです。

1.漫画編集者の仕事とは?

まずは漫画編集者の仕事についてです。

今回は、私が現在漫画の編集をしているため、「漫画編集」としていますが、
活字の文庫や新書、単行本や実用書、ビジネス書、雑誌なども、
そこまで大きくは変わらないかもしれません。

企画を立てる、プレゼンする

まず編集の仕事の中で一番大切なことは、
「企画を立て、プレゼンをすること」です。

本は企画がないと何も始まりません。
編集者は常に、仕事中はもちろん、プライベートでも頭の片隅で、
「いい企画はないか?」「これは本の企画にできないか?」考え続けています。

今、どんなものが流行っているか、
どんなテーマが良いか、
売れている本はなぜ売れているのか、
どういう読者が想定されるか、
タイトルは? 著者は? 書影(本の表紙)は? 目次は?
など企画を常に考え続け、出し続けているのです。

企画を立てられない編集者は、
編集者ではないと言っても過言ではない
、と職場では叩き込まれました。

そのぐらい編集者にとっては常に「企画を考えること」が重要なのです。

また、企画を立てるのと同じぐらい大切なのが、
「売れる企画を考える」ことです。

編集者や営業担当、実際に店頭でそれを売る書店員も、
ボランティアではありません。

企画段階で「売れる」と自信を持って言えるものでなければ、
その本を作る意味がないのです。

もちろん、世の中には「専門書」や一般的に大きく売れる訳ではないけれど、
必ずその本を必要としている読者がいて、そのために刊行されているものもあります。

ですが、もしそういったものを手掛けているのでないのであれば、
必ず「売れる企画」にするにはどうすれば良いのか、
考え抜くことが編集者の責任
となります。

出版業界や出版社と関係の深い書店は、
長い間、斜陽産業だと言われてきました。

現在のところ、実は電子の漫画の売上が伸びていることもあって、
そこまで斜陽業界ではなくなっているのですが、
紙の本を売る書店は、依然としてかなり厳しい状態です。

そんな中で売れない本を1冊増やしても、無駄になってしまうだけなのです。

それだけ「売れる企画を考える」ことが、
編集者の第一のミッションになるのです。

かつ、そんな企画を「プレゼンすること」も大事な仕事です。
私自身は話すことがかなり苦手な方なのですが、
自分で考えた企画を他の編集メンバーや社内の会議でプレゼンし、
興味を持ってもらい、企画会議を通過させるためには、
いかにその企画が新しいか・面白いか・売れるか
自信を持って、解像度高く、魅力的に他者に説明できる必要があります。

他者にその面白さが伝えられなければ、
せっかくの素晴らしい企画も日の目を見ることなく、
ボツにされてしまいます。

ですので、編集者の仕事はまず「企画を立て、それをプレゼンすること」だと言えるのです。

著者と打ち合わせをする・取材をする

続いて、編集の仕事の2つ目は「著者と打ち合わせをすること」です。
企画を立てたら、次に自分がその企画で一緒に本を作りたいと思った著者をリサーチして、
「一緒に本を作りませんか?」と打診していきます。

ここでも「プレゼン能力」は大切です。
漫画の場合、著者は漫画家で、
活字の本の場合、作家だったり、その道の専門家だったりします。

人気の漫画家や作家、その道の有名な専門家であればあるほど、
すでに抱えている仕事で忙しく、
断られてしまうことも多く発生します。

そこで、なぜあなたに仕事を依頼したいと思ったのか、
いかに今回の企画が面白いか

相手に少しでも興味を持ってもらえるように、
メールや、口頭で説明する必要があるのです。

ここで断られてしまえば別の著者をまた一から探す、
あるいは企画の練り直し、
最悪の場合、企画が立ち消えとなってしまうので、
この「著者への打診と打ち合わせ」も重要なターニングポイントの一つなのです。

もし進められることになった場合、
実際、本にするための打ち合わせを、
何度も著者とくり返していくことになります。

書籍にするためのスケジュール、
いつまでにどれだけの作業を進める必要があるか、
内容は? 目次は? タイトルは?

など、何度も何度も打ち合わせや連絡をできる限り重ねて、
書籍の作業を進めていきます。

本の原稿を整理していく

続いて、「本の原稿を整理していく作業」です。
漫画の場合はプロット→ネーム→清書という段階で進んでいきます。

まず打ち合わせをしながらどんなストーリーにするかプロットを決め、
それが決まったら、ネームと呼ばれる漫画の下書きを著者に描いてもらい、
それに「赤字」を入れていきます。

「赤字」とは著者に対する”修正の提案”のようなものです。
著者は一人でお話を組み立てるので、
第三者の読者目線での感想や、読みやすく、わかりやすくするためのアドバイスを必要としています。

「編集者の仕事」として一般的にイメージされるのは、
この「原稿に赤字を入れている」印象かもしれません。

ですが、この作業はここまで述べたように、
企画を考え、著者と打ち合わせをしたうえで、進めていく作業になるため、
編集の仕事の大きな割合をしめるというものではないのです。

原稿を整理する中では誤字脱字や、内容のつながりで不自然なところ
読者目線でわかりづらいところがないか、
もっとこういう内容を入れたら面白くなるのではないか
様々な角度から原稿を見て、時には別の編集者にも読んでもらい、
修正の赤字を入れていきます。

そしてさらに、著者から修正原稿をもらい、
それにさらに赤字を入れて…という作業をくり返しながら、
少しずつ1冊の本にするための原稿を溜めていきます。

これは、単行本のケースなのですが、
例えば、週刊連載の忙しい漫画雑誌や新聞連載の場合、
作家さんの家に赴いて、原稿が上がるまで待機させてもらう…、
作家に原稿の催促をする…
、ということも大事な編集者の仕事の一つになります。

書籍作業をする

原稿がある程度溜まったら、書籍にする作業をしていきます。
ここからは著者よりも、編集者がメインで進める仕事になっていきます。

デザイナーやDTP、印刷所と連絡を取り、
表紙や中身のデザインをどうするか相談し、
デザインが固まったら印刷所へデータを送って、
見本を出力してもらい、色味の調整を行います。
また、同時に内容に誤りがないか、不適切な表現がないか、
時代背景などに間違いがないか、校閲や校正者に中身の確認をしてもらいます。

ここには大体1ヶ月前後の時間がかかります。

発売前後の宣伝・告知などプロモーションをする

以上の仕事の他に、
「宣伝やプロモーション」も編集者の仕事に含まれます。

出版社の中には普通、営業部が存在していますが、
現在は、編集者も宣伝やプロモーションをする時代です。

例えば、著者のSNSで告知をしてもらったり、
対談を組んだり、
メディアや著名人に取り上げてもらえるよう献本をしたり、
イベントを運営したり、
編集は発売前後にできる限り、
その本の認知度を高めるためのプロモーションを行います。

時には著者のマネージャー的役割をこなすこともあり、
編集者の仕事は企画立案~書籍化作業~宣伝・プロモーションまで、
非常に多岐にわたると言えるでしょう。

2.働く日の一日ルーティン

次に、「働く日の一日ルーティン」について紹介していきます。

私の場合、午前中9~10時頃に始業し、
まずはメールをチェックします。
著者から前日までに届いているメールを確認して、
急ぎのメールはすぐに返信をします。

それからタスクを確認して、
優先順位の上から順番に仕事を片付けていきます。
例えば、著者さんから届いた原稿のチェック(赤字入れ)、
企画書の準備、諸々の関係各所への連絡、書籍作業

時には受賞作品の選考など、様々な業務を同時に進めていきます。

一日のうち、社内会議が入っていることも多く、
会議では書籍の売れ行きや新しい企画について話し合います。

また、午後は著者との打ち合わせを1~2件ほど行います。
打ち合わせは大体1~3時間程度行うことが多いです。

終業時間は大体19時~20時半頃になります。
このうちお昼休憩の時間を1時間ほど間に取っています。

残業は多いかと言われると、そこまで多いとは感じません。
編集者は結果さえ出していれば、働き方の自由度はとても高い職業であり、
私自身も仕事がまるで遊びの一部であるかのように感じながら働いているからです。

もちろん「校了」と呼ばれる、
書籍化の大詰めの作業の段階では非常に忙しくなってきます
が、
全体として激務であるという印象は、現在のところないです。

編集者の一日というと、昔は終電までとかあるいは次の日の朝まで会社にいる、
など激務なイメージが強かったのではないかと思うのですが、
現在は働き方改革が進んでかなり編集者も働きやすくなっていると感じます。

また、私の会社はリモートワークや出社もかなり自由が利くので、
ほとんど会社に来ないで働いている人もいます。

このように、会社によって環境は異なると思いますが、
編集の仕事は柔軟性が高く、自分の裁量に大部分任せられている仕事と言えるでしょう。

人によっては、とても楽しく働ける仕事であることは間違いありません。
現に、私も”天職”だと思うほど、毎日ストレスなく楽しく働いています。

3.編集者には向いている人/向いていない人

ここまで、編集者の仕事について解説してきましたが、
いかがだったでしょうか?

「編集者になりたい」とか「編集の仕事に興味がある」という人にとっては、
魅力的にも感じられる仕事内容だったのではないかと思います。

この章では、編集者の仕事に興味があるという人に向けて、
どんな人が編集者に向いているのか、
逆に編集者に向いていない人とはどんな人なのか解説していきます。

編集者に向いている人

  • アイディアや発想が次々と浮かぶ人
  • 物事を深く考えることが好きな人
  • 強引な人
  • 漫画や本、アニメなどコンテンツが好き/好奇心旺盛な人
  • 人の気持ちに敏感な人
  • 細部にこだわる人
  • コミュニケーション能力が高い人
  • クリティカルシンキングができる人
  • がむしゃらに頑張れる人

例えば、上記のような性質を持っている人は、
編集者に向いていると感じます。

先述したように、編集者はとにかく「企画力」が求められるため、
「アイディアを次々と思い浮かぶ人」や「好奇心旺盛な人」は向いていると思います。
また、有名な著者や人気の作家、タレントに書籍の企画を依頼する場合は、
「強引さ」も必要になったりします。

また、本を作るうえで、
「今どんなものが流行っているか」、
「なぜあの本は売れているのか」、
「すでに市場にある本と差別化するにはどうしたら良いか」、
考え抜くことも重要になります。
そこで、「クリティカルシンキング」だったり、「細部にこだわり抜く力」
「物事を深く深く思考する力」が大切になってくるのです。

さらに、企画を進めていく中で、
様々な関係者に協力を仰ぐことになります。
著者はもちろん、営業、デザイナー、校正者、DTP、監修者、書店員…などなど。
多くの方と協力して、円滑に物事を進めていくために、
「コミュニケーション能力」も重要になってきます。

加えて、書籍の作業を進める中で、
「どうしたらより読者の心の響くか」、
「どうしたらもっとそのコンテンツを好きになってもらえるか」、
「表現の中に人を傷つけるものはないか」、
様々な角度から考えることも必要になります。

そこで、「人の気持ちに敏感であること」も重要なのです。

また、編集の仕事は思っている以上に、
泥臭い仕事でもあります。
一見面白そうに感じるかもしれませんが、
売れない本を作り続けていては、その会社も潰れてしまうことになります。

YouTubeやSNS、ゲーム、アニメ、映画など、
いくらでも面白いコンテンツが溢れている今、
可能な限り考え抜いてたくさんの企画を出し、ヒットに拘り続けるために、
「がむしゃらに自分の力を出し切って、ハングリーに頑張る」という能力も、
大切になってくること間違いありません。

一方、編集者に向いていないと思う人はこんな人です。

編集者に向いていない人

  • 深く考えることが苦手な人
  • 作ることが苦手な人
  • 規則やルール通りに働きたい人
  • アイディアを考えることが苦手な人
  • 繊細すぎる人

「向いてる人」の項目で書いたように、
本にする際、いかにその本を作り込めるか、
最後まで粘り強く取り組めるかが重要なため、
「深く考えることが苦手」だったり、
そもそも「何かを作ることが苦手」な人には辛い環境かもしれません。

また、かなり変則的な自由度の高い業務内容なので、
自分で仕事を見つけて、作っていくということも必要になります。

そのため、「規則やルール通りに安定して動くのが好き」という人も、
難しいかもしれません。

また、「繊細すぎる人」も向いていないと言えます。
なんだかんだ言って、泥臭い仕事ではあるので、
著者の気分の浮き沈みに引っ張られたり、
何度出しても企画が通らないことに落ち込んだり、
人と関わる仕事なので、
対人関係でストレスを感じすぎたりしてしまう人には、
厳しい環境である可能性があります

ですが、あくまでも、
これは私が感じる編集者に向いている人/向いていない人の要素なので、
参考程度に留めていただき、
興味があれば、挑戦してみるのが良いのではないかと思います。

4.編集者になるには?

最後に、「編集者にはどうやってなれるのか」、解説していきます。

新卒で編集者になるには、
まず出版業界という狭い関門を突破しなければなりません。
出版業界への就職活動のヒントは、
こちらの記事にまとめているので、
ぜひ参考にしてみてください。

出版就活の秘訣/これを見れば、必要な準備と対策がわかる!

また、中途採用の場合は、
「未経験でもOK」なのかと言うと、
これはかなり会社によって変わってきます。

出版社という業界自体、
本を扱うという仕事の内容から、画一的な人材より、
どちらかといえば様々な体験や経歴を持つ多様性な人材を求めている傾向があります。

そのため、全く違う業界で働いてきた人でも、
経歴が面白かったり、選考の中で人事が編集への適性を見出せば
内定を出すケースも実際あるようです。

その一方で、
そもそも「経験者歓迎」とか「〇万部以上刊行実績あり」などと、
募集要項に書かれているケースも多く、
必ずしも「未経験で通りやすいか」と言われると難しいところではあります。

業界全体として余裕がある訳ではないので、
即戦力を求めがちな傾向もあるためです。

こうした状況を踏まえたうえで、
もし、あなたが編集者になりたいと思っているなら、
まず第一にすべきことはとにかくコンテンツに詳しくなることです。

本、漫画、アニメ、ゲーム、映画、演劇、動画、ドラマ…、
なんでも構いません。

いかにコンテンツに詳しいかが編集者として活躍できるかを左右すると、
自分が編集者になって感じています。
(そもそも、思いつくネタの量や深堀できる質が異なってくるからです)

そして、コンテンツをできる限り研究したら、
編集未経験でも潜り込める環境を探してみてください。

大学生であれば、
出版社のアルバイト、インターン、
中途採用であれば、
契約社員、編集プロダクション、アルバイト…

とにかく実践の経験と現場を見ることです。

そして、そういった経験を積むチャンスに恵まれたら、
可能な限りその環境で、結果が出せるよう尽力しましょう。

そして、ある程度の結果が出せたら、
いざ一人前の編集者になるべく、実際に求人を探して応募してみましょう。

そこでは、先述したように、
編集になってからも求められる「プレゼン力」を駆使して、
「編集者に向いている」という根拠や、
自分が編集者になったらどんな本を作りたいのか
、力説しましょう。

あなたがもし編集者になりたいとしたら、
その夢が叶うことを願っています。

おまけ:編集者の仕事についてわかる本

編集者になりたいあなたに、
おすすめの本を2冊紹介します。

1冊目は見城徹さんという現在の幻冬舎創業者兼社長を務める、
出版業界の中でその名を知らない人はいないほど、
有名な編集者で何冊もミリオンセラーを出しています。

内容は少し古い部分もありますが、編集者という仕事に対しての情熱と、
ヒットメイカーの彼がどんな心構えで仕事をしているか学べる1冊
なので、
ぜひ手に取ってみてください。

(私のバイブルになった本でもあります!)

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2冊目は、こちらも編集者として有名な都築響一さんという方の著書です。
1冊目が熱い本だったとすれば、こちらはディープな本だと言えます。

都築響一さんはサブカルやローカルカルチャーに興味を持ち、
本を作ってきた方で、
編集者としていかに自分の興味を深く掘り下げてディープなものを作っていくか
編集者ならではの考え方を学べる本です。
ぜひ読んでみてください。

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5.まとめ

今回の記事では、編集者の仕事について紹介してきました。
いかがだったでしょうか?

予想以上に大変だったという感想もあれば、
イメージ通りだった、もしくは予想以上に楽しそうだった
と感じた方もいるかもしれません。

私は元々編集者になりたいと長い間思っていて、
現在、その夢が叶っている状態なのですが、
声を大にして言えることは
「編集者の仕事はとんでもなく楽しいです!!!」ということです。

今回の記事をきっかけに編集者がどんなことをしているか知ってもらえたり、
編集者に興味を持ってもらえたり、
また編集者になりたい方の参考になれば、嬉しい限りです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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